2012年8月19日日曜日

『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』、四方田犬彦評


朝日新聞 GLOBE 2011年 6/5-18
Cinema Critiques [映画クロスレビュー]

『愛の勝利を』

ムソリーニの愛人。存在をかけた愛と悲劇

――みどころ――
イタリアの独裁者となるムソリーニ(フィリッポ・ティーミ) に尽くした女性、イーダ・ダルセル(ジョヴァンナ・メッゾジョルノ)の物語。ムソリーニは妻子ある身だったが、イーダと落ちる。彼女は財産をなげうってムソリーニの政治闘争を支え、息子(ティーミの二役)も授かった。だが、国家統帥となったムソリーニは、イーダの存在を消そうと、書類を改ざんし、精神科病院の閉鎖病棟に送り込む。愛の真実を訴え、彼女はひとり立ち向カう。監督マルコ・ベロッキオが資料映像などを織り交ぜながら、ひとりの女性の史実を掘り起こす。全米批評家協会賞主演女優賞受賞。
(東京で公開中。全国で願次公開)

四方田犬彦 (評価)☆☆☆☆☆(最高)
これは懲罰と監禁をめぐる痛ましい物語である。ベロッキオ監督は1960年代末に詩人パゾリーニに激賞されて以来、一貫して狂気と抑圧という主題を取りあげてきた。そして、日本と同じくポスト・ファシズム体制を生きるイタリアで、同時代の不幸なテロリズムの顛末(てんまつ)を見据えてきた。その彼がムソリーニの傍らで生きた(そして殺害された)女性を描いた。精神病院なる機関がいかに人間の自由を蝕(むしば)み、全体主義国家において牢獄の代用物であったかは、旧ソ連で実証されている。この忌まわしい制度を近年全廃したイタリアでこそ、この作品は制作が可能であった。日本にこのような敢督はいるのだろうか。


1年以上前の新聞から。

敬愛する四方田犬彦氏の評が掲載されていたので切り抜いていた。
素直に面白そうな映画だと思う。
すでにDVD化されてるみたいなので、機会があれば観たい。

しかし、Amazonのレビュー、2人が正反対の評価をしていて興味深い。
それだけ人の感情を揺さぶる映画なのでしょう。




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